話を聴くということ
2.聴く力とは
さまざまな企業から、システム・エンジニア、営業担当者、カスタマ・エンジニアに“きく力”をつけてほしい、と依頼されます。
“うちの営業は、お客さまのところでしゃべりすぎて、ちゃんと話をきいてこない。” “うちのSEは、お客さまがおっしゃることを、ただ、はいはい、ときいてくるだけで、どうしようもない”
ということで、聴く力をつけるコースを開発することになり、半年くらいの間、有能なビジネス・パーソンに、彼らの"聴き方"について、インタビューをしたことがあります。システム・エンジニア、営業担当者、カスタマ・エンジニアはもとより、新聞記者、コンサルタント、会社経営者など、人に会って話を聴く機会の多い、さまざまなお仕事の方に広くお目にかかりました。
お願いした基準は、次の3つをすべて満たす方であることです。まず、お客さまからの評価の高い方であること、社内での評価の高い方であること、ご本人が楽しんで仕事をなさっている方であること、この3つです。今現在、もっとも求められ成果を出しているのは、この3つを兼ね備えた方だと、つねづね考えているからです。
お会いするだけでインスパイアされるような素晴らしい方々が、ご自身の経験から身につけた“聴く哲学”を語って下さり、感銘を受けたものです。
「“聴く”ということは、そのテーマについてあらかじめ勉強したり、相手について予備知識を仕入れたり、質問項目を用意したりという下準備はもちろんですが、大切なのは、話を聴きながら、その人物がどういう人となり(全体像)で、何を考え、どんな意見をもっているのか、(絵として)イメージできるように、聴いていくことです。」
「(複数の方に聴いていく場合)誰が、どういう意見をもっているかを知って、白地図に加筆していくことです。」
「相手が言葉にすることだけをヒアリングするのではなくて、相手の"中身"はどうであるのか、という本音を探ることが大切です。」
「何を聴くか、よりもっと大切なことは、出会った人と信頼関係をむすぶこと、誠実さです。」
「日頃の問題意識が大切です。日頃、広く問題意識をもち、自分の認識の枠をひろげておくことです。」
「自分の個性や考え方のクセを知っておくことです。聴くということは、どうしても自分のフィルターを通して相手を捉えることになるわけですから。」
含蓄のある言葉ですね。私達としては、こういう哲学を、どのように言動に表していくのか、具体的に何をどうしたらよいのか、を考える必要があります。
各界のプロにおききした中で、彼らが具体的にやってきて成功したこと、失敗したことなどをまとめると、そこには、業界や立場を越えて、共通の要素が浮かび上がってきました。それは、大まかに次の3つに集約できます。
@対人敏感性
A質問、傾聴スキル
B情報マイニング
この3つの前提として、相手の方との誠実な人間関係が大切であることは、いうまでもありません。それは、
第2章 自分を育てる/相手の立場にたつということ (2.話のできる関係を作る)でお話ししました。これがなくては、当然それに続くコミュニケーションが実りあるものになることは期待できません。
また、ある方がお話しして下さいました。いい関係さえできていれば、一回のミーティングでききそこなっても、あとからメール、電話で、いくらでもきいていくことができる、と。
それでは、@ABを順に考えていきましょう。