話を聴くということ
4.質問のスキル (3/10)
直接と間接
通常、セミナーは9時から5時まで行いますが、その中で参加者は、昼食後に大変な睡魔に襲われます。私どもは"魔の2時半"とよび、この時間帯にはロールプレーやゲームなどが来るように時間配分をしますが、内容によってはそういかないこともあります。
そんな時、テーマが質問のスキルですと、眠そうな参加者(多くは男性です)のそばに言って問い掛けます。“〇〇さん、私のこと、好きですか?”これは、眠気を醒ますのが本来の目的ではないのですが、その効果は絶大です。実際、何度も問い掛けましたが、YesであれNoであれ、答えをいただけたことは一度もありません。
仕方がないので、別の参加者に、“△△さんは、私のことを好きだというのですが、どう思います?”と問い掛けると、“あ、それはいいんじゃないですか。”と皆が皆、なぜか嬉しそうに答えて下さいます。
こんな他愛もない二つの質問からも学ぶことがあります。質問に答えると、そのとたんに答えたことに責任を負うことになりますね、ご自身がおっしゃったことなのですから。人は、そのリスクを感じると、答えることを躊躇するのです。うっかり"好きです"などと言ってしまって、後々面倒なことになったらどうしよう、“嫌いです”と答えて機嫌を損ねられても困る、などと頭の中はめまぐるしく動く一方、言葉は止まるのです。経験がありませんか?
そんな時、他の人は好きと言っているけれども、それについてあなたはどう思いますか?と間接的に質問すると、その答えは、肯定的なものであれ、否定的なものであれ、その第三者に向けられることになるので、直接私に対しての責任が発生せず、リスクがかなり軽減されて、答えが出やすくなるのです。セミナー中の実験では、直接的に質問した時の回答率は完全に0%、間接的に質問した時の回答率は95%といったところです。
そして、大事なことは、間接的に質問した時に出てくる答えは、第三者の意見を評論するような形式をとっていますが、実はその中に、ご本人の本音がしっかりまぶされているのです。だからこそ、間接的に質問をしていくことの意味があるのです。