話を聴くということ
4.質問のスキル (9/10)
5W1Hが教えてくれること
さて、聴き方についてインタビューして驚いたのは、全員の方が“5W1Hできいていくことが大事”とおっしゃったことです。
初めの2,3人がおしゃった時には、基本ね、と軽い気持ちでいましたが、4人、5人と続くうちに、真剣に驚きだしました。
たとえば、ある新聞社の記者人生はまず事件・事故の警察取材から始まり、来る日も来る日も警察に行っては発表をきいてメモをとり、デスクに報告します。その際、事前にインタビュー・スキルやメモのとり方のレッスンがあるのかと思ったらとんでもなく、“5W1Hできいてくるように”と指導される程度なのだということです。
そんなことなら簡単、と警察発表を一語一句もらさないつもりで書きとめ、デスクに報告すると、“Whoが足りない!”と。名前、年齢、住所、仕事など一通り情報はとってきているのに、どこが足りないのだろうとこわごわ尋ねると、年齢がダメだ、と。警察発表通り20歳と報告しているのにもかかわらず、ダメ出しされたのは、生年月日がないとのこと。生年月日によっては、インタビューした日には20歳になっているかもしれないけれども、事件がおきた日は19歳だったかもしれない。19歳と20歳では扱いも異なるし、生年月日なしには年齢をきいてきたことにならないそうです。
なるほど、なるほど、と感心しながら、あることを思い出しました。まだ10代の頃、米国ケンタッキー州で、ハワイに住む日本人女性と何日か寝食をともにし、朝から晩までたくさんの会話をかわしていた時のことです。彼女が、ある日不機嫌そうに言うのです。“あなたの質問は、Whyばかりだわ”と。たしかに今でも私の質問はWhyが多く、その分、事実をきちんと把握するために必要なWhenやWhereが手薄になることがあります。
そんなことを考えていたら、インド生まれのイギリス人作家ラドヤード・キプリングのこんな文章が目にとまりました。
「私には6人の忠実な従者がいた。私の知識はすべて、この6人が教えてくれた。彼らの名前は、What, Why, When, Where, How, Whoである。」きっと彼もある時、5W1Hの威力を再認識し、この言葉を残したのではないか、と思うのです。