話すということ
2.準備すること
今日は、いい結果を得るために気合を入れて話をしよう、という時には、皆さん、どんな準備をしていらっしゃいますか?
話す内容を整理して資料をつくるか、頭の中で組み立てることは誰でもなさると思います。その際、自分の話したいことを、自分のスタンスで資料にするのではなく、プレゼンテーションの目的にとって効果的なもの、きき手にとって魅力的なものにするには、どんな工夫ができるでしょうか?いくつかのヒントをご紹介しましょう。
@目的
A目標
Bきき手の人数
Cきき手はどんな人?
D協力者
E日程・時間配分
F会場・座席
G資料・ツール
H想定質問
たくさんの方にプレゼンテーション・スキルのご案内をして感じることは、@目的A目標がプレゼンター自身明確になっていて、しかもプレゼンテーションの最初に短い言葉ではっきりと述べられると、大変好印象です。光ります。時間にして、ほんの1分程度でいいのです。逆にあまり長いと、焦点がボケてしまって、逆効果です。話をするということは、その間きき手を拘束することです。それなのに、話の目的や今日のところ目指す目標などを最初に告げないというのは、犯罪に近い、と思うことすらあります。
Bきき手の人数は、用意するお部屋や備品(OHPやPCとプロジェクターなど)、資料の数などに影響します。たとえば、きき手が2名という場合、プロジェクター、OHPなどは使わず紙ベースで行う会社もあれば、人数に関わりなくプロジェクターを使う会社もあります。そういったカルチャーは事前に担当者にお伺いする必要があります。
@ きき手がどんな人か、立場や専門性、関心、興味などについて、事前に入手できる情報があると、とても話しやすいです。また、プレゼンターに対して、あるいは話のテーマや内容に対して、きき手がどの程度知っているか、さらに関心や興味、意見、好意、偏見、先入観などをもっているかにも配慮しましょう。それによって、準備する資料も、当日の話し振りも、異なるでしょう。
A ビデオ、PC、オーディオなどを使用したり、製品のデモを行う場合、器材を操作しながらのプレゼンテーションは意外にむつかしいと考えて下さい。普通は問題なく操作できるものでも、プレゼンテーションの間はきき手のほうに意識がいっていますので、いつもと同じようにはいきません。協力者がいると心強いですし、器材の操作の間、きき手を待たせることがありません。
一人ですべて行う場合は、リハーサルをより完璧にする必要があります。また、ちょっとしたハプニングが起った場合にどうするか、なども考えて準備するようにして下さい。
Eきき手にとって都合のいい日程がどういうものか、という視点で考えましょう。また、時間配分を考える時は、人が集中して話をきくことのできる時間は、1時間から1時間半だということを忘れないで下さい。それ以上長く行う時には、休憩が必要です。
また、質疑応答の時間、これは大切です。一方的にお話をするより、きき手から質問や意見をいただく方が、与える影響はずっと大きいのです。話す内容に自信がない時は、あまり質問の時間をとりたくないと感じることでしょう。そのためにH想定質問を事前に考えそれに対する回答を準備し、万全に備えるのです。プレゼンテーションがうまい、と言われる方は、この時間をたっぷりとります。与えられた時間が1時間であれば、20分とる方もいらっしゃいます。それだけ効果が大きいからです。
また、質疑応答が白熱してくると、ときに時間を延長してしまいそうになることがありますが、プレゼンテーションで一番大切なことは終了時間を守ること。時間厳守は、話し手が思う以上に、大切なことです。
F会場や座席がきき手に与える影響を考慮していらっしゃいますか?テーブルの並べ方一つで、会場内に対立関係が生まれたり、親密な空間になりますね。コの字型、ロの字型にお席を作るのが、きき手同士や、きき手とプレゼンターの心理的距離を縮めるのに役立ちます。双方向のコミュニケーションがとりやすいのです。もっとも、20名を越えるような場合は、また別です。
コの字型に設定した場合、プレゼンターの右手の位置に座る方にちょっと気をつけてみて下さい。ここに座る方は、よきにつけ、あしきにつけプレゼンターに質問や疑問を忌憚なくなさりやすいように経験上感じています。座席の位置と心理状態に関して、米国のメイという方の研究があるのですが、彼も同じことを報告しています。もし可能なら、ここにあなたの右腕にある方、サポートして下さる方に座っていただきたいものですね。
体験から感じることは、会場の快適さ(室温、明るさ、使い勝手、椅子の座り心地、隣りの方との距離、コーヒーの用意など)がきき手に与える影響は、ときに話の内容をしのぐほどです。また、前方のスクリーンやボードの見やすさにはどなたも気をつけると思いますが、見にくいお席ができてしまう時には、そのお席の方に、最初に一言お詫びをしてから始めましょう。
机上に置くタイプの名札をあらかじめお席に置いておく時は、名前の面を入り口に向けてセットしておくと、入ってきた方が一目で見渡せて、助かります。
G資料やツールでは、見やすいこと、わかりやすいこと、印象に残りやすいことを心がけて下さい。パワーポイントで作成することが多いですが、映写する場合、タイトルは44ポイント以上、一番小さな文字で20ポイントは必要です。
色や動きは意味に統一をもたせ、自分が話す順序を考えてそれに合わせて作成します。一度にすべてが出てくるよりタイトルや項目だけ示して、きき手がききたい気持ちになってから必要に応じて情報が出てくる方が効果的です。
OHPでも同じですが、タイトルをはっきりとさせ、一つのテーマは一枚にまとめるようにしましょう。一枚は、8行以内を目安にして下さい。
でも、どれほど素晴らしいスライドを作っても、きき手を動かすのはあなただ、ということを忘れないで下さいね。