夢を育てる
3.あなたを満たすと起ること
そして21日後に得るものは、一番シンプルに言えば、小さな奇跡です。こればかりは、体験してみないことには、理解していただきにくいことです。私自身、これを知ってから、最初に実行するまで10年かかりました。まわりで、たくさんの方がやってみて、皆、口々にご自分の身に起ったことを興奮しながらお話下さるのをききながら、それでも、“私にはそんな奇跡なんて起るはずがないわ。”と見事にかたくなに拒み続けました。
ある冬の初め、自分の頑張りももう限界というところまできて、方向も失い、エネルギーもこれ以上どこをどう探しても出てきそうもないほど消耗して、さて、どうしようと思った時に、このやり方を教えてくれた友人に相談を持ち掛けました。すると彼女は、“あら、以前にアドバイスしたことを実行しない方に、これ以上アドバイスするのは、失礼だと思うわ”と言われて、ハッとし、さっそくその場で10項目を挙げました。ところが、自分では4つしか挙がらず、その後は彼女が忍耐強く私にインタビューをしてくれて、やっと9つまできましたが、どうしても最後の1つが出てきません。その時、彼女が、こんなこと言ったのです。“あなた、その長い髪を切りなさい。髪を切ると変化するわよ。”確かに私には変化が必要でした。そして、髪は10年以上、背中にかかる巻き髪でした。そこで、10番目は“髪型を変える”にしたのです。が、私としては、どうしてもこの髪は切りたくなかったのです。それでもなぜそれにしたか、というと、ここまでくるのに、もう数時間もかかっていて、丘の上のリゾートホテルは夕暮れ時を迎え、この辺で手を打とう、という気持ちになったからでした。別れ際、彼女は私の消耗ぶりが気がかりらしく、“かならず21日、やってみるのよ。でも、あなたのことだから、まるで仕事を片付けるみたいになってくるかもしれない。そうなったら、何の意味もないから、止めなさいね”と言って手を振りました。
翌日から21日間、“仕事にならないように”気をつけながら取り組みました。不思議だったのは、項目として一番に挙げた“ゆっくり眠る”を初日から立て続けに3日も引き続けたこと(実際、本当に眠りたかったのです)、しぶしぶ加えた“髪型を変える”はついぞ引かなかったことです。そして、始めて一週間を過ぎたあたりに、今まで考えたこともなかった展開、変化が急にやってきて、そこから、私は心と体の元気を取り戻すことになったのです。
このやり方をご案内すると、ときどきこんな危惧を口にされる方がいらっしゃいます。“そんなふうに自分を甘やかしていいものかしら”と。ところが、面白いことに、こんなことが起るのです。10項目を挙げる時に、どう勘違いしたものか、“ワンピースを買う”“エステに行く”“バッグを買う”“5つ星レストランでランチをする”などがずらっと続く、どこか方向違いのリストになってしまった場合、これにそって始めると、途中で飽きてしまって、一日忘れ、二日忘れして、結局続かなくなることが、よくあるのです。
そういった例を見てきて、私達の考えるところは、このやり方は、自分を満たす本来の機能を果たしている時にしか21日続かないということです。自己愛的になってくると、自分で飽きてしまって自然消滅する、そんなメカニズムを、このやり方自体が含んでいるように思えてならないのです。
“わがままになる”と“相手に気を使う”というのは、ちょうど、反対にあるように感じますね。“わがまま”というのは、まず自分のことを第一に考えるスタンスですし、“気を使う”というのは、自分は差し置いて、相手のためにエネルギーを使うスタンスですから。でも、自分を満たしていると、この二つが両立できます。わがままは、自己中心的なものから、いいわがままの状態つまり“自分の気持ちに素直になる”とでも表現しうるものになってきます。そして、気を使うというのも、自分を殺して相手に気を使うというニュアンスから、“相手に心配りをする”というホスピタリティーに重点が移ってきます。
“自分を満たす”というと、今までのパラダイムの中では、“自分を甘やかす”ように感じてどうしても抵抗のある方がいらっしゃるのではないかと思います。けれども、インターインディペンデントの時代には、あなたを最も活かすことによって、相手のためにも、社会全体のためにもより貢献できるようになるのです。