あなたの人生を輝かせるコミュニケーションの力
関係性から離れる

1.関係性の幻想

親は子に無償の愛を注ぐ、夫は家族を守る、社長は社員を大切にする、上司は部下を暖かく指導育成するなど、地位、立場、役割などから派生する「関係性」からものごとを見ることがありませんか?

たとえば、親の子供に対する愛は尊重され、あがめられ、この世で最も美しい愛の一つとして称えられてきました。実際には、ずいぶんと違う現実があり、親によって子供の命が奪われることは昔からままありましたし、愛に名を借りて、親のエゴによるさまざまな支配や自由の制約が日常行われています。

実際はそうでないからこそ、そのような関係性の幻想を作りあげ、皆で同意し、個々の現実を見ずに、そうであるかのような世界に生きているように見えます。

関係性の幻想の中で生きる方は、自分の思考、感情、言動がそれにそぐわない時、その幻想が強く社会で同意されていればいるほど、幻想を疑うより、自分を否定しがちです。

たとえば、子供を産んでみたけれど、無条件の愛がもれなくついてくるわけではなく、やはり自分も眠りたい、休みたい。泣き叫ぶ赤ちゃんに一人で途方に暮れる日々を過ごすうちに、自分にはこの子を育てていくことができないのではないか、親の資格がないのではないか、と自分を否定しはじめ、自信をなくし、心身の健康を害するお母さんがいます。

学齢期になっても言葉を発さず家に引きこもり、あらゆる手を尽くしてもますます頑なになって何年も自室から出てこないようになってくる、体が大きくなって全身で訴えてくるその力に、家族も避難しなければならないような暮らしになってくるにつけ、全責任が自分にあるように感じて、一切を終わりにしようとするお父さんがいます。また、子供の方からの幕引きは、ときにエキセントリックな事件として、TVや新聞を賑わせます。

その幻想が強く社会で同意されていればいるほど、伝統として尊重されていればいるほど、たとえそれが心理的拷問に近いものであっても、一人でNoというのは、大変な勇気がいります。でもそれが本来の自分に戻る道ならば、それを選択することもできるのです。
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