喜んでいただくということ
1.自分を活かす
どんな仕事でも、自分がすることで喜んでくれる誰かがいるから全うできますね。会社でも、地域でも、家庭でも。無理なスケジュールや急な仕様変更に追われ、連日高い緊張感をもって長時間コンピュータに向かっているシステム・エンジニアの方で、過労やストレスが長期間にわたって続く中で、しだいに心身を病む方がでてきます。現場の方からお聞きしたことによると、同じように過酷な状況にあっても、なんとか切り抜ける方とそうでない方がいて、その違いは、何らかの形でお客さまにお目にかかるチャンスがあるかどうかと関係がある、というのです。少しでもそれがある方のほうが健康を保ちやすいようだ、それがたとえ怒鳴られることでしかなくても、お客さまの顔を想像もできない環境にある方に比べて、明らかにいいのだ、と。
この本の最初で、人は、仕事をしていく上で、二つの軸をもっている、というお話をしました。それは、生産性と充実感です。仕事の生産性がどんなに高くても、そこにワクワクするものや、成長できるポイント、人から感謝されたり社会に貢献しているという実感が見出せない状態では、人は生き生きと働きつづけられないのです。
自分が仕事をすることで相手が喜んでくれる、ということは、この充実感に大きく影響します。タフな状況になって連日深夜まで残業し、緊張感が続き疲れ果てながらなんとかその問題を解決したとします。その苦労が何で報われるかといえば、月末に振り込まれるお給料ではなく、そのことで喜んで下さるお客さまやメンバーの顔、"ありがとう"という言葉ですね。
喜んでいただけるととても嬉しい、嬉しいとエネルギーが沸いてきてもっと貢献したいと思う、そのためにさらに学び考え工夫をしていく、そうすることでさらにまた喜んでいただける、その繰り返しが自信になり自尊心を高めていく、こんな連鎖が起こります。
ですから、相手に喜んでいただく、ということは、自分を喜ばせ、自分を成長させ、いい人生を創ることなのだと思います。あなたがそういう存在になれば、周りの方もその影響を受けて、全体がいい方向に進んでいく、そんなきっかけにさえなるのです。