あなたを活かす
7.あなたの活かし方
さて、自分を成長させたい、と願う場合、かつては、弱点、短所を強化することが望まれた時代もありますが、弱点を強化しようとしても、相当なエネルギーと時間がかかる割には成果が少ないことが観察されています。
その反省もあってか、最近では、個性を伸ばそう、ということが学校教育でも標榜されていますが、実現できているところは、そう多くはないのが現状です。
まじめな方ほど、努力に努力を重ね、自分のお尻をたたき、まだまだダメだと自分を責め、自分のコントロールの及ばないことまで自分に責任を感じて苦しんでいらっしゃるのを見ることが多い日常です。
今まで長きにわたって機能してきた社会のシステムが疲弊し、崩壊がすすみ、これから新しい秩序を作っていかなければならないという、拠りどころの何もない、不安で混沌としたこの時期に、自分が自分の味方でなくて、どうして前に進んでいかれるでしょうか?自分で自分を受容しないで、一体誰が"今のままでいいのだよ"と励ましてくれるのでしょう。
とはいえ、自分を認めて、受け入れ、褒めてあげる、というカルチャーのない中で育ってきた私達が、急に自分を受容しようとしても、とまどうばかりで、どうしていいものか、途方に暮れてしまいます。セミナーや講演の機会に、参加者の素晴らしい点を、具体的に指摘して褒めて差し上げると、“会社に入って以来、初めて褒めてもらいました!”と、本当に顔を輝かせて喜び、自信をとりもどす姿を見るにつけ、自分を受容しないでむしろ否定することを教える伝統が、どれほど、人を生きにくくしているのか、怒りを感じます。
その伝統を変えていこうとする時、気づくのは、学校の先生も、会社の上司も、子供をもつ親も、みな同じく、自分を受容してはいけない、もっともっと努力して頑張らなければいけない、という伝統の中で育ってきた、ということです。つまり、今のままでいい、と受容するそのやり方を、知らないわけです。やり方を知らなければ、効果的にできるはずはありません。知らないことは、教えてもらう必要があります。私は、この本で、そのやり方を、お伝えしようと思います。それは、私が生まれつきできていたことでは、全くありません。私自身、かつての伝統の中で、ひどく頑張って生きてきたのですが、その割には、幸せになれない状態を体験してきました。その過程で、さまざまな立場のたくさんの方々から、“違うやり方”を教えていただきました。この本は、その中で、私がやってみてよかったこと、まだすっかりできているとはいえないけれども、きっと誰かの役に立つと思えること、誰でもやってみればできそうなこと、を書いたものです。
大切なのは、自分を責めることでも、お尻を叩くことでもなくて、“自分を知ること”です。書店にならぶたくさんの本には、“自分を愛することが一番大切”と書いてあって、本当にそうだ、と思うのですが、私には、“自分を愛する”ということが、まだよくわからず、できないでいます。そのような本がたくさん出ている割には、それを読んで自分を愛することができるようになった、という人が、私のまわりには、いらっしゃいません。
私にできることは、“自分を知ること”でした。そして、これなら、誰にでも役立てることができるのではないか、と思うのです。
第1章では、自分を知る方法(ソーシャル・スタイル)をご紹介しました。続く第2章では、日常、途切れることなく続く他の方々とのやりとりのなかで、自分を殺すのではなく、相手を否定するのでもない、クリエイティブなコミュニケーションについて、考えます。そして、第3章では、やがて始まる新しい時代を担っていく方になっていただくためのヒントをご案内したいと思います。
ソーシャル・スタイルは、“社会の中での自分を知る”ツールです。自分の強みを具体的、客観的に知り、それを認めて、受け入れ、褒めて下さい。自分を励まして下さい。自信は外から与えられるものではなく、内面に備わっているものです。今のままの自分を認めることで、それを引き出して下さい。自分を認めたからといって、何も悪いこと、不都合なことは起こりません。それは、今までセミナーや講演でお目にかかった、たくさんの参加者が教えてくれました。